今年は2カ所でとうもろこしを栽培しています。1か所(A畑)は5年前にハクビシンによって200本ばかり全滅させられたところです。もう1か所(B畑)も去年ハクビシンに荒らされたところです。引っ掻かれたトウモロコシを見たときに感じたのは、〈これは嫌がらせだ。ハクビシンは怒りを顕わにしているのだ。〉ということでした。それで、ハクビシンについて調べてみると、戦前は台湾から軍人の毛皮用などに、戦後は中国などからペット用に輸入されていることがわかりました。しかし、いずれの場合も、用が無くなったら、日本人は無責任に自然の中に放置して、後は知らんぷりをしている実態が見えてきました。今やハクビシンは全国各地に見られ、森や林のある所だけでなく、住宅地でも出没しては、畑や家庭菜園の作物を荒らしています。その実態を知って、私は自分の畑では、トウモロコシを分かち合うようにしたところ、途中からハクビシンの嫌がらせがぐっと少なくなって、去年は全滅コースではなく、6割は無事でした。その経験を踏まえて、今年は敢えて被害に遭った同じ場所でトウモロコシを作りました。収穫が始まる直前から、3週間にわたってトウモロコシの分かち合いの試みの経過をまとめたので、ご紹介します。
第1週目
トウモロコシの様子を見に行ってみると、どちらの畑でもまだ熟していないのに、ハクビシンが“試食”を始めた跡があったので、昨年同様、そこへ行くたびに場所を浄めて、天地創造の神様に真剣に次のような祈りを捧げました。
1.日本人が戦前から今日までハクビシンを勝手に輸入して、不要になったら、野山に放置している身勝手を深くお詫び申し上げます。
2. 自分のとうもろこしをハクビシンと仲よく分かち合うことができますように。
3. 願わくば、売り物になる大きいものは収穫させていただいて、ハクビシンには小さいものを食べてもらえます様に。
毎回、ハクビシンに向けても同じ内容のことを念じて、思いを届けようとしました。
さて、その週の終わりに収獲が始まりました。結果は次のとおりです。
収獲数(大きいもの) 17本
ハクビシンが食べた本数(大きいもの) 18本
たくさん食べられました。しかし、良く聞くのは、明日収獲しようと思っていたら、その晩に全部やられたという話です。私の畑ではそれは起こりませんでした。
(ハクビシンがかじったトウモロコシは食べやすいように一か所に集めて、皮を剥いて、立てておいた。)
第2週目
毎回、畑に行くたびに、先に上げた祈りを捧げました。ハクビシンにも同じ内容のことを念じて、思いを伝えようとしました。取り組みは劇的な展開を見せました。
まずは結果をご覧ください。
収獲総本数 288本
ハクビシンが食べた総数 23本
ということで、本当に大量の収穫ができました。嫌がらせで引っ掻かれたトウモロコシは一つもありませんでした。そして、皮を剥いて、立てておいたトウモロコシは全部食べてくれました。
ハクビシンさん、ありがとう。神様、ありがとうございます。こんなに良い結果になろうとは、正直言って想像だにしていませんでした。あまりの被害の少なさに興奮を覚えました。正に祈りが天地創造の神様に通じ、なおかつハクビシンにも通じているのを実感しました。
余談ですが、B畑ではカラス対策を全くやっていませんが、カラスにも荒らされていません。こんなことも初めてです。
(内心ヒヤヒヤしていたが、ありがたいことに最適な時期にたくさん収穫できました。)
(えりすぐって、お店に並べました。たくさんあったので、残りは次に日に持って行きました。)
第3週目
まずは結果をお伝えします。
販売用に収獲した総本数(大きいもの) 282本
私がもいでハクビシンに分け与えた総本数 37本(中~小さいずのもの)
ハクビシンが自分でもいで食べた総数 (小~大といろいろ) 24本
合計343本
この週も、毎回畑に行くたびに立ち止まって、手を合わせて、真剣に先に紹介した三つの祈りと収穫を許されている感謝の祈りを捧げました。そして、ハクビシンにも同様の念を送りました。
(その日も大きいトウモロコシがたくさん収獲できました。)
第2週目の経験から、神様の計らいで私の思いがハクビシンに通じていることを確信しました。それで、分かち合いの思いをさらにはっきりと示すために、この週はハクビシンが必要とするトウモロコシの数を推定して、私の方でハクビシン用に小さ目のトウモロコシをもいで、皮を剥いて、地面に立て掛けるようにしました。
ハクビシンは毎回それをとても上手にきれいに食べてくれました。それでお腹がいっぱいにならない分だけ、“自分でもいで”食べました。
(実にきれいに全部食べてある。以前は、もっとガサツに食べ散らかしてあった。)
(自分でもいだものも以前よりきれいに食べてある。)
両方合わせると、ハクビシンが食べたのは64本で、全体の18%。本数は多いですが、商品として見た場合、売り物になるのは、2,3割だけでした。ハクビシンが、いわゆる“いやがらせで荒らした”トウモロコシは一本もありませんでした。このような結果からわかるのは、ハクビシンは私の“願い”をちゃんと知っていて、かなりの程度までそれに応えてくれていると言うことです。私とハクビシンとの間には“共生関係”が成り立ったと言っていいように思います。
まとめ
ハクビシンとの共生の試みを3週間分お伝えしてきました。それは私にとって、「和み農」の実践を意味しました。「和み農」は一言で言うと、「循環と共生の21世紀農業を目指す人の心構え」です。それは次のような八つの柱から成りたっています。
1. 全ての生き物と共生し、
2. 環境と調和して、
3. 排出ガスを最小限に抑え、
4. 作物と心を通わせ、
5. 資材を循環させて、
6. 技能を磨き、
7. “本当に安全な作物”を作る。
そして、
8. 神への祈りから始める
(詳しくは、以下のホームページをご覧ください。https://nagominou.com/?page_id=93
今回は、特に、1.全ての生き物との共生 と 8.神への祈りから始まる を実践しました。昨年も同様の実践をしました。その経験から実感としてお伝えできるのは、次のようなことです。
① ハクビシンを憎む気持ちは全くなくなりました。むしろ、まだ見ぬ恋人のように、とてもいとおしく感じるようになりました。
(私の畑に夜な夜なやってくるハクビシンもこんなかわいい顔をしているのでしょうか。)
② ハクビシンに私のトウモロコシを与えることは当初抵抗がありましたが、今はハクビシンと心が通じ合えることを喜ぶ気持ちが数段勝っているので、分かち合えることが喜びになりました。
③ 神は人の作り上げた観念ではなくて、「神は実在する!」ことを実感しています。農家ないし百姓はかつてそれを自然に実感できていたのだろうと思います。ミレーの有名な絵「晩鐘」は農家が還るべき原点を描いているように思います。農家にとって祈りは単なる形式以上の実質的な意味があったのではないでしょうか。それは先進国の農家が失った”技能”だったのかもしれません。
(農夫とその妻の祈りは素朴で、真摯で、深く、神に通じていることを感じさせます。)
④ 自然の背後には神の創造された厳粛なる掟があって、人も動物もそれを守らなければいけないようになっていると感じます。それを真っ先に犯した日本人がまずは天地創造の神様に真剣にお詫びをして、同時にハクビシンにもお詫びをしないといけないと言う気づきが、今回の試みの出発点でした。それは間違っていなかったと思います。
⑤ 天地創造の神様にもハクビシンにも感謝の気持ちでいっぱいです。
全国的に年々獣害はひどくなっています。総被害額は500億を超えたと聞いたことがあります。その原因は一体どこにあるのでしょうか。この報告書が今まで光が当たらなかった箇所に少しでも光を当てることができたなら、幸いです。
小川 誠
【追記】 第4週 ハクビシンンの道徳心
第4週以降は収獲数が数十本と少なくなって、10日間で3回しか畑へ行きませんでした。ですから、当然ハクビシンはたくさん自分でトウモロコシをもいで食べたはずです。ところが、実際には4,5本しかもいでなくて、いいトウモロコシはほとんど手を付けてありませんでした。ハクビシンは私がもいで皮を剥いて立て掛けたトウモロコシだけを食べるように努めていることがはっきりと見て取ることができました。〈もっとたくさん食べたかっただろうに・・・。〉そのことに気付いて、私は感動で知らず涙が流れてしまいました。ハクビシンは私の思いやりに応えようと、自分で自分の欲望を自制すべく努力していたようなのです。外来の野生動物であるハクビシンはそんな道徳心を持った動物のようです。すなわち、私たちがハクビシンを勝手に輸入して、不要になったら野山に放置していることに対して、日本にいるハクビシンは怒りを持っていて、畑を荒らすことで日本人を困らせてやろう、仕返しをしてやろうと思っています。しかし、ひとたび一人の人間がそのような日本人の身勝手を天地創造神とハクビシンに真剣にお詫びして、自分の作物を仲よく分かち合えますようにと祈り、その想いを行動に移すと、今度は逆にその人間の気持ちを汲んで良心的に振る舞おうとする動物らしいのです。
自然界の奥深くには、人と動物の関係について、(おそらくすべての生きとし生きるもの同士の関係について)、神の定めた厳粛な掟があると感じます。人がその掟を正しく守ると、動物の方もその掟に従って行動するようになるのではないかと感じています。