バンダナ・シバさんの主張の一つである「種の自由」という考え方は日本人にはまだ馴染みが少ないです。今日はちょっとこのことをご紹介したいと思います。
バンダナ・シバさんは今のままでいったら、いつしか私たちが使える種は世界中どこに行っても全てグローバル企業の遺伝子組み換え種になってしまうと考えています。「種」は、かつてガンジーが1世紀前に「塩」を求めてイギリス政府の独占に対して非暴力・不服従運動を起こしたように、塩と同じくらい重要な物だと考えています。身の回りの自然にある「種」を当たり前に使って作物を育てることができなくなって、遺伝子組み換えの高い種を強制的に買わねばならない事態に陥った時、それが私たちの持続可能な生活や伝統に根差した文化などを破壊して、貧富の格差をさらに拡大し、なおかつ生物多様性や自然環境を破壊し、同時に汚染していく、恐るべき大量破壊兵器、大量殺りく武器にまでなりうると考えていらっしゃるのです。
ちなみに、インドではすでに綿の85%が遺伝子組み換え種子だそうです。その種の値段は在来種の80倍もするそうです。それを買うしかない立場に追い込まれた貧しい農民が(たぶん借金を返せなくなって土地を取り上げられて)もう27万にも自殺に追い込まれているそうです。
そういう事態を目の当たりにして、バンダナ・シバさんは、私たちが身の回りにある自然が生み出した種を当たり前に使って、当たり前に蒔いて、当たり前に作物を育てる権利を保障することを「種の自由」と呼んでいて、それを守る活動を世界的に呼びかけているわけです。
今、すでにアメリカでは遺伝子組み換えのトウモロコシが95%市場を席巻しています。だから、在来種のトウモロコシはもはや絶滅するしかないような事態に追い込まれています。それは、在来種を育てる有機栽培農家の収入の糧を奪っています。大豆は80%が遺伝子組み換えです。遺伝子組み換え種子はそうして着々と有機栽培農家を死へ追い詰めつつあります。恐ろしいことに、アメリカでは遺伝子組み換え種子に知的所有権が与えられているので、法律は有機栽培農家を守ってはくれません。そんな反自然な法律が仁王様のごとく自然と調和した農業を営む有機農家ににらみを利かしているのです。TPP加入したことで、同様の事態がほぼ確実にこの日本でも起こることになるでしょう。
小さくて、取るに足りないたかが種ごときの話です。ところが、ひとたびグローバル企業の手にかかると、そこまでの殺人兵器、破壊兵器と化してしまうほど恐るべき悪魔的な側面を有しているのです。
ぜひ「種の自由」について関心を持っていただきたいと思います。
小川