誰が「過敏」なのか、誰が「鈍感」なのか


最近、化学物質過敏症の方から(橘さん)から「化学物質過敏症は人間本来持っている防衛反応だ」という話を聞きました。私もそう思います。

そもそも「過敏」だというのは、相対的な概念で、周りが鈍感な人ばかりだったら、普通の感覚を持っている人が「過敏」とみなされてしまうわけです。        

一番わかりやすい例が、生まれたばかりの赤ちゃんが「体に良くないもの=毒」を飲み込むとすぐに吐き出すことです。まともな本能が働いている赤ちゃんにはそういう力がありますね。                  

 かつて森永ヒ素ミルク事件という悲惨な事件がありました。当時は表に出なかった話ですが、被害者の弁護士だった中坊公平さんは、被害者の聞き取りを進める中で、あることに気が付きました。それは、ヒ素の入ったミルクを飲まされると吐き出した赤ちゃんがいたという事実です。ところが、その意味を理解できない母親は、何度も何度も赤ちゃんにそのミルクを与えたから、お腹がすいて仕方がなくなった赤ちゃんは、やむを得ず、命を繋ぐために毒入りミルクを飲むしかなかったんですね。そうして、神経障害や臓器障害になってしまった。死んだ子もいました。そういう反応をした赤ちゃんがどれくらいいたのかは統計もないし、親も語らないし、正確なところは全くわかりませんが、私はかなりの赤ちゃんはそのような反応をしたんじゃないかと思っています。あの大事件の裏には、そんな母親の悲しい現実がありました。          

ですから、翻って考えると、多くの化学物質に反応しない平均的な現代人は果たして「普通」なのか、「鈍感」なのか、わかりません。

前便で紹介した橘さんは芳香剤をつけた宅配便の配達人が配達に来ると、その品物に付着した芳香剤で苦しくなってしまうそうです。それって、きっとわずかな量ですよね。それでも体が反応するんです。芳香剤は、テレビで「30㎝のハッピネス」とかやってる香水ですよね。 それでは、ハッピネス(happiness)どころか、マッドネス(madness)、つまり狂気の沙汰ですよね。
そんな化学物質が我々の体に無害であるはずがありません。それを感じる橘さんはまともなんだと思います。ちゃんと本能が働いている。むしろ私たちのほうがはるかに鈍感なんです。


平均的な現代日本人は、そのような本能が働かなくなっているという点で多かれ少なかれ病的と言うか、危険な状態にあると思います。日常的に化学物質を体に取り込んでいることで、未来のある限界点に向けて、病気爆弾を自ら製造しているような面があると思います。その爆弾が大きくなればなるほど、破裂したときは事態は深刻になりますね。インスタントラーメン症候群は、その好例だと思います。発症したら、たちまち命が奪われかねない恐ろしい病気です。

ということで、こと化学物質に関しては、私は「過敏な人」に教えてもらったほうがいいと思っています。

地球のエネルギーをプラスにする米作り

地球のエネルギーをプラスにする米作り

昨日、一番大口のお客さんにお米を納めてきました。絞めて1800㎏、60俵です。

このお米は全国規模の流通に乗ります。ということは、大型倉庫で保管されます。ということは、納入するときに水分を一定にしないといけません。ということは、乾燥機で水分調整をしながら乾燥させないといけません。ということは、コンバインで刈るのが合理的です。そして、当然ながら、トラクターで耕して、田植え機で植えて・・・、と完全に機械化された稲作になります。

さて、そのような機械化稲作が今の日本ではごくごく一般的に行われていますが、それでは、それで地球全体のエネルギーはプラスになるでしょうか?それとも、マイナスになるでしょうか?

私の恩師、岩澤信夫先生はそれを計算したところ、1キロカロリーのお米を生産するために 農薬と化学肥料を使う化学農法だと、2.3キロカロリーの石油を消費することがわかったそうです。化学農法のお米を食べるということは、石油をがぶ飲みすることを意味しています。そして、化学農法で生産すればするほど、地球全体のエネルギーはどんどん減っていくということです。

それが、有機栽培になると、農薬と化学肥料を使わない分だけ、地球のエネルギー消費が改善されます。しかし、まだプラスにはなりません。それに加えて、不耕起・冬期湛水にすると、トラクターも全然使わなくなって、肥料もいらなくなるので、エネルギー消費はさらに大きく改善されます。ただ、プラスになるかどうかは、今は亡き岩澤先生からは聞くことができませんでした。

そして、ここからは、自然農法の開発者である福岡正信さんの主張になりますが、不耕起・無農薬・無肥料で、かつ全て人力で米を作るのが、最も地球のエネルギーを高めるというのです。ちょっと考えれば、そんなことは当たり前のことなんですが、彼は、もう50年も前に米作りと地球のエネルギー消費の関係について考えていたんですね。高度経済成長真っただ中にあって、エネルギー多消費稲作の行く末を正確に見据えていたんです。すごい人物です。

ということで、専業農家として一番力を入れたいのは、不耕起・冬期湛水の米作りです。しかし、冬期湛水できる田んぼがとても限られていて、自分の夢はほんのわずかしか実現していません。

なので、それならば、市民の皆さんに頑張っていただこうと始めたのが、「やってみ田んぼ」です。自分と自分の家族のお米は自分の体を使って100%人力だけで、有機栽培で、できれば不耕起で、作っていただく。首都圏だったら、そういう方が1000人、1万人と増えていったら、どうでしょうか?母なる地球はとても喜ぶことでしょう!

地球環境のことに関心の高いみなさん、ぜひこのことをちょっと立ち止まって考えていただけないでしょうか?
主食であるお米を自分で作るということは、食の安全と食料の安全保障を確保するだけではなく、この地球にとってもとても良い事なのです。