今年の自然耕塾も早いものでもう9回目を迎えました。
不耕起冬期湛水の田んぼの稲は穂をつけて、たくましい姿になりました。
さて、自然耕塾では、午前中は実習、午後は講義というのが基本形式です。
午後の講義は、今は亡き岩沢信夫先生がご自身で作成された講義ノートに沿って講義を行っています。このノートの中身が非常に濃くて、最新情報も取り入れて、専門的な知識がきっしりと詰まっています。ただ、米作りについて時系列で書かれているので、その中から毎回講義のテーマを探し出すことが求められます。それが、講師の仕事だと思っています。
私が探し出した今回のテーマは「お米の商品化」です。いよいよ稲刈りを間近に控えて、稲刈り・脱穀をこなすと、お米が収穫できます。その籾を籾摺りすると、玄米になります。玄米=「玄米という商品」と理解している人が多いのではないでしょうか。
いえいえ。それはとんでもない誤解です。実際は、籾以外にも、小石をどけて、ゴミをどけて、小粒なコメをどけて、割れたお米をどけてという風に、粒ぞろいの「きれいなお米」にするまでにはまたまた長い道のりがあるのです。そのためにコメどころでは数億から数十億もするような巨大なコメ商品化プラントが設置されています。
自然耕塾に学んで将来お米を生産したいと思っている人たちはそういった既存のルートに乗るような人たちではないので、今言ったようなことを最小限の規模で実現する必要があります。講義ではその辺のノウハウについてお話しています。
その中で一番重要なことは籾で貯蔵することだお伝えしています。籾という完全な生命体で貯蔵することが一番自然の摂理にかなっているのは言を待ちませんが、それを出荷するたびに籾をするというこまめな対応をすることが一番おいしいお米を一番新鮮な状態でお客様にお届けできて、なおかつ巨大プラントの論理に陥らないですむ、”別の道”を歩む前提になるように思います。お客さんと直接繋がることが同じよう重要なことです。そうして、三つ目に重要なことは、智慧を働かせることです。それを楽しいゲームと思って取り組むと、”別の道”が開かれていくように思います。
例えば、今回は、敢えて、「くず米」と言われる小粒米や、青米などが混ざったお米を塾生に試食してもらいました。すると、みなさんは「おいしい!」で一致しました。そうなんです。有機栽培のお米は「くず」でもおいしいんです。「安ければ、買う人もいるんじゃないですか。」という感想もありました。実は、そのような発想は米つくり専業農家にはまずありません。「きれいなお米」でないと商品ではないと決めつけているからです。私は前々から気になっていたくず米の扱いについて、このヒントをもとに、なんとか消費者が喜んで買ってくれるような「商品」にする工夫をすることに決めました。
ま、こんな感じで「商品」とはなにか、塾生ともやり取りしながら、ワンパターンではない学び合いをしています。
小川