このブログの原稿を書いていて、前回初めて「相互進化」という言葉を思いついたら、何のことはない。そういう言葉はすでに存在していて、「共進化」という言葉も目に飛び込んできた。ネットで調べたら、ウィキペディアにもちゃんと載っているではないか。私はいかに無知で、無学であるかを思い知らされた。ちなみに、そこには以下の定義がある。
共進化(Co-evolution)とは、一つの生物学的要因の変化が引き金となって別のそれに関連する生物学的要因が変化することと定義されている[1]。古典的な例は2種の生物が互いに依存して進化する相利共生だが、種間だけでなく種内、個体内でも共進化は起きる。
そして、種間の共進化の例として、次の事例が挙げられていた。
共進化の代表的な例として、ハチドリによるランの受粉がある。鳥は花の蜜に依存し、花は鳥による花粉拡散で生殖が可能になっている。より効率的な花粉媒介を期待するなら、同じ種の花には同じ種のハチドリだけが来るようになっていた方がよい。そのため、花はハチドリの形に合わせ、ハチドリも花からうまく蜜を取るように花に合わせた形に進化する。それによって鳥の嘴は長くなり、花の形は深くなった。
そして、その直後、その方面に詳しい上田恵介教授の話が見つかった。実は、上田先生は2年前に自然耕塾に参加された先生だ。不思議なご縁だ。もしかしたら、当時上田先生は私のこのような話をにやにやしながら聞いていたのかもしれない。上田先生のお話はとても分かりやすいので、以下に引用させていただくことにする。
──植物とそれ以外の生物にもやはり「共進化」が起こるわけですか。
上田 もちろんです。例えば、果実にはいろんな色や大きさ、味がありますよね。モモやリンゴなどの甘くて大きな果実は、人間が長い栽培の歴史の中で改良を重ねていったものですが、ヒトがいなかった時代、それらの原種は小さくて甘味も少なかったでしょう。じゃあ、それらが何のために存在していたのかというと、鳥やサルたちをおびき寄せるためです。
──種を運んでもらうために?
上田 植物の中には、さやがはじけて種子を遠くへ飛ばしたり、風に頼って分散を図るのもいます。これらの方法だと、あまり重い種子をつくるわけにはいきません。しかし、軽い種子では発芽率、定着率も悪くなります。種子のために十分な養分を蓄えてやること、遠くへ分散させること、動けない植物がこの相反する矛盾を解決するために生み出した方法が、鳥やサルを引き寄せるための果肉をつけることだったのです。そして、甘くしたり、ちょっとでも目立つ色にすればあちこちに運んでもらえます。
野山を歩くと緑や茶色の実よりも赤い木の実が多く目につきますよね。あれらも鳥に種子を運んでもらうために、果肉をつけ、目立つような色になっていったんです。また赤い色にはもう一つ効果があります。赤は鳥には見えやすく、種子を食害する昆虫には見えにくい色なので発見されにくい。もし、発見されたとしても鳥が食べにやってきてくれるわけです。
そして、以下のナメクジの話は傑作だ!爆笑しないわけにはいかない。
ヨーロッパにはイヌの糞に擬態したナメクジがいるそうですが…。
上田 初めて見た時は、ほんとにギョッとさせられました。最初は冗談で考えついたんですが、よくよく考え直してみると、やはりあれは人間に踏まれないようにしたナメクジの知恵なんだと思います。
──どんなものなんですか。
上田 割と大きいです。大きさは親指くらいありますから、10−p近いと思います。ちょうど中型犬の糞と同じくらいですね。色も少し赤っぽい茶色と、黒に近い焦げ茶色と2種類あります。
この2種類あるのも意味があるんじゃないかと思います。一つなら恐らく見破られてしまうけれども、2種類が混ざって存在することによって撹乱できる。こっちはナメクジかも知れないけど、こっちは本物かも知れないとか、つい迷わされてしまう、というのはかなり効果的な意味を持っているわけです。
──人間も選択者なんですね。
上田 ですから、人間も進化を促す役割を持っているんです。
そうなのだ。人間も進化を促す役割をになっているのだ。人間と生き物との間で数々の共進化が生じているのは間違いない。ただ、私と上田先生の認識の違いは、私が「いのちの世界」も進化にかかわっている、つまり、「他力・自力融合進化」のことを言っているのに対して、上田先生は学者だから、基本的には種それぞれ独自の「自力進化」という立場なのだろうと推察する。今度一度ぜひ大家族にお越しいただいて、詳しくお話ししていただきたいと思うようになった。
続く