今から30数億年前に誕生したシアノバクテリアは酸素がなくても呼吸をして、葉緑素を使って酸素を作り出したと、さりげなく言いました。それは光合成のことですが、言わずもがな光合成では同時にでんぷんも作り出しています。さて、その葉緑素ですが、私たちは木や草の緑は葉緑素だと知っているから、シアノバクテリアに葉緑素があっても別段驚かないかもしれません。しかし、そこに葉緑素がなかったら、生物の進化は何も起こらなかったわけですから、葉緑素の誕生は進化の歴史の中で最も重要な出来事と言ってもいいのかもしれません。葉緑素で行われている光合成の仕組みは現代科学の粋を以てしても未だに解明できない神秘のベールに包まれています。スーパーコンピュータの出現でヒトの遺伝子がすべて解読されたこの時代にあってもです。その複雑で、高度に洗練された生体メカニズムは”魔法”と呼ぶにふさわしいものです。例えば、植物の葉に当たる太陽光線はなんと数千兆分の一秒という速さで処理されるそうです。数千分の一ではありません。数千万分の一でもありません。数千兆分の一秒です。このような驚異的な速度を何と形容すればいいでしょうか。言葉がありません。だから、魔法?でなければ、神のなせる技、神技?
太陽光が地球に1時間注ぐエネルギーは全人類が1年間に消費するエネルギーと同じだそうですが、それをもっとも効率よく利用しているのは、我々人類が発明した太陽光発電ではなくて、葉緑素です。なにしろでんぷんというバッテリーがなくても貯蔵できる生命エネルギーに変換してくれるのですから。そんなわけで、「和み農」では、藻の葉緑素を、野菜や木々の緑を、一種畏敬の念を以って見つめます。