稗に心を寄せて(3)

稗が農家から嫌われるもう一つの大きな理由が除草剤が効かないことだった。農家を重労働から救った除草剤は今の化学農法ではなくてはならない物だ。その除草剤が効かないとなれば、農家いじめの悪玉的な存在になるから、嫌われても仕方がない。なぜ除草剤が効かないかというと、稗と稲は遺伝子が同じだから、遺伝子を傷つける除草剤が使えないからだと聞いていた。

ところが、ここ4,5年前ぐらいからだろうか、稗専用の除草剤が開発されたということを聞くようになった。私の想像だが、遺伝子解析技術の飛躍的な向上で同じと思われていた稗と稲の遺伝子の違いが明確にされて、そこを狙う除草剤が開発されたのだろう。稗や哀れ。とうとう稗の知恵を凌ぐ人間の科学の勝利だ!これで稗の命運も尽きるのか。

いえいえ。そう簡単に問屋は卸さないだろう。ここからが私の言いたいことだ。ご存じのとおり、かつて稗は食糧として栽培されてきた。今でも、雑穀として栽培しているところはある。だから、全面的に嫌われ者というわけではない。しかし、やはり田んぼでは昔から悪玉で、嫌らわれ者だったに違いない。そういう自分であることを知っている稗は様々な知恵を働かせて、生き残りの技を獲得してきた。嫌われれば嫌われるほど、稗は知恵を働らかせてきた。そのただならぬ能力と根性は見上げたものだ。そうなのだ。稗は大変な知恵者であり、努力家でもあるのだ。だから、私は稗は除草剤を上手にかわす術を必ず開発するに違いないと確信している。

ご存じのように、今やたんぼでは除草剤では枯れない、スーパー雑草が誕生して、徐々にその生息範囲を拡大しつつあある。ならば、知恵者である稗が同じ技かそれ以上の技を身に着けるのは時間の問題だろう。私はそう思っている。

続く

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