稗に心を寄せて(9)

「いのち」は別に脳がなくても自ら思考していると申し上げた。だから、バクテリアでも思考している。すべての生命はちゃんと思考している。ただ、植物は静的な存在で移動できない。だから、動的で脳のある動物よりも「いのちの世界」と強く結びついていて、そこから受ける影響も守られる度合いも動物より強いのではないかと思う。

さて、「自力・他力融合進化」のもう一つの理由をあげよう。トマトの色の例に戻れば、では、トマトはどうやって、緑色の実を赤くすることができるようになったのだろう。その能力はどうやって獲得したのだろうか。突然変異で、偶然に青や、紫や、灰色や、黄色や、いろんな色の実ができたのだが、たまたま赤い実が鳥に好まれて、自然淘汰で赤い実のトマトが生き残ったのだろうか。 私はそうではないと思う。宇宙には叡智が満ち満ちていて、宇宙の一側面である「いのちの世界」も同様だ。その世界が「トマト君、実は赤くした方がいいよ。」と教えてくれているのだろうし、また実を赤くするための方法も教えているに違いない。トマトがそう望んだとしたらの話だが。

数年前に面白い話を聞いた。ガラパゴス諸島のオオトカゲには、二種類あって、海の苔を食べる海のオオトカゲと、サボテンの花が落ちてくるの待ってそれを食べる陸のオオトカゲがいるというのだ。そうやって棲み分けがなされている。ところが、地球温暖化の影響で海の苔が十分に育たなくなっってしまったそうだ。それは、コケを食べるオオトカゲには死活問題だ。すると、どうだろう。コケも食べるし、なんとサボテンに上って、咲いている花も食べる、ハイブリッド種が誕生したというのだ。それなら、コケが減っても海のオオトカゲが生き延びる可能性は高まるのは間違いない。本来なら、何百年、何千年かかって起こるような変化が実にタイムリーに起こっている。私はこれは「いのちの世界」が生き物に働きかける良い例ではないかと思っている。そうやって、環境の変化に適応した種を地上に誕生させているのだ。ただ、そうなると、今度は花が落ちてくるまでのんびりとサボテンの下で待っている陸のオオトカゲは食べ物が奪われてしまうから、危機に陥ってしまう。こちらはどうなるのだろうか?その後の変化が興味津々である。

地球温暖化による生物界の激動が始まっている。生物同士が生息域を巡って、食料を巡って大移動をし、時に激突する事態が誕生しつつある。それは、生物種の絶滅と進化が加速される事態を招いていくだろう。その激変する環境下では、突然変異や自力進化だけでは追いつけない事態が次々に起こっていくに違いない。しかし、「いのちの世界」はその危機を乗り越える能力をあまたの生物に与えていくに違いない。

続く

 

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です